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2021年8月法話『影響(えいきょう)と影響(ようこう・ようごう)』
影響(えいきょう)と影響(ようこう・ようごう)
影響(えいきょう)とは、影(かげ)と響(ひびき)で組み立てられた言葉だ。
影とは、光が物にさえぎられてできた暗い部分のことだから、物と影とは密接な関係がある。
では響はどうか。
山に向かって「ヤッホー」と声を出すと、山の方からこだまが返って来る。声や音がなければこだまもない。音(声)があるから、響くのだ。
影が物に従い、響が音に応じるように物と影・音と響は切っても切れない関係にあり、変化し、まさに影響している。
要するに、ものごとには原因があり、その働きが他に伝わって変化することが(影響)という言葉になったと思う。
たとえば、
「新型コロナの感染力が強く、人類の生活や経済に大きな影響を及ぼしている」
と使われているようにだ。
ふり返ってみれば、人類の歴史は、いい意味においても悪い意味においても影響力の積み重ねによって今日に至っていると言えるだろう。
この影響という言葉は仏教でも使っている。仏教語では(えいきょう)とは読まず、(ようこう)あるいは(ようごう)と表現する。
読みもちがえば意味もちがう。
仏教でいう影響(ようこう・ようごう)は仏さまの教えが人々に伝わり、人生のあり方に変化を及ぼすことなのだ。
仏さまの教えは釈尊の言葉だけでなく、さまざまな方法で伝える。
たとえば、谷川のせせらぎ、山に吹く風、葉と葉がすれる響が仏さまの説法と感じ取ることができたら、仏さまからの影響(ようごう)なのだ。
『岩波仏教辞典』は
「影響(ようこう)とは、影が形に随い、響が音に応ずるように、仏・菩薩が〝機縁〟に応じて現れて仏法を守護し、衆生を利益すること。‐‐‐‐また、姿を現さずに来臨すること」と説明している。
仏さまはわたくしたち衆生に対してあらゆる方法で救済してくださっている。これが、影響(ようこう・ようごう)なのである。
(阿 純孝)