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2020年9月法話『開発(かいはつ)と開発(かいほつ)』
開発(かいはつ)と開発(かいほつ)
未開発地域というと、前人未到のジャングルを想像する。子供のころ、映画で見たターザンの世界だ。現代ではあらゆる所で開発(かいはつ)が進んでいるから、自然のままで残されている地域はどこにあるのだろうか。
科学技術の急速な発達により未開の地は極度に減少した。
天然資源を求めて資源開発(かいはつ)をする。
日常生活をより豊かにするために新製品を開発(かいはつ)する。
何でも知りたがる人間がいるから、やめられないのが研究開発(かいはつ)だ。
地球上に生息する生物の中で一番発達したのが人類だが、それは開発(かいはつ)する能力を具えていたからである。
したがって、開発(かいはつ)とは進化と同義だと言ってもいいだろう。
この開発によって生活はがらりと便利になったが、困ったことに地球破壊という現象が現われてしまった。いいことばかりではない。開発(かいはつ)にはそのような欠点もあるのだ。
ところで、この開発(かいはつ)は本来、開発(かいほつ)と言っていた。つまり、仏教の訓えから出たことばなのである。
その教えとは、
開発愚心(かいほつぐしん)といって、私たちの煩悩にとらわれた心を解放し、心を開いて菩提心に目覚めることなのである。
密教の『大日経』でも「最初に金剛宝蔵を開発(かいほつ)す」と言っている。
要するに、煩悩という欲望にふりまわされることのない仏性を開き発起することを開発(かいほつ)と言うのだ。
この道理は、菩提心に目覚めることであるから、すべての生きとし生ける者と共に仏道を完成していかなければならない、となると「山川草木悉有仏性」とか「草木国土悉皆成仏」ということばが示す通り、山・川・草・木・国土など自然全体が人間と仲間なのである。自然と共に仏の道を歩むのが仏教の思想である。
としたならば、今後の地球上の開発(かいはつ)は、仏教精神に基づく開発(かいほつ)の考え方を学ばねばならないだろう。
自然に対して美と恩と情を持つことだ。 (阿 純孝)