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2020年4月法話『上品下品(じょうひんげひん)と上品下品(じょうぼんげぼん)』
上品下品(じょうひんげひん)と上品下品(じょうぼんげぼん)
品とは、品物(しなもの)、商品(しょうひん)、品切(しなぎれ)、品薄(しなうす)、あるいは新品(しんぴん)。品をシナ、ヒン、ピンと発音はちがっても、形ある物の意味である。
では、これはどうだろう。
品行、品性、品格、気品。
品は物資ではなく人柄を表す言葉になっている。
上品(じょうひん)下品(げひん)も人柄に関してのことばだ。気品があって洗練されていれば品位が上だから“上品”といい。品性が下劣だと、“下品”だといわれ軽蔑される。
私は、はたしてどちらだろうか。
上品でないことは自分でも百も承知だ。かといって、下品にはなりたくない。どちらかといえば中をとって中品かと思うのだが、その中品がことばとしてなぜないのか。考えてみれば不思議である。
ところで、人柄を評価することを「品定め」というが、『源氏物語』でも物語として書かれているから、いつの時代でも人は他人を評価したがるものらしい。
『源氏物語』帚木の巻で、
光源氏、頭中將、左馬頭、藤式部丞の男たちが宿直所に集まって、退屈しのぎに理想の女性とは、どんな女性がいいかなど、思い思いに語り合う場面があるが、現代の居酒屋に配置換えしてもぴたりと収まる。
ところで、上品下品は、もとは仏教からでたことばである。『観無量寿経』という浄土教の経典に上品、中品、下品についての教えが説かれている。私たち衆生は行いもさまざま性格もいろいろ。それでも、仏さまは、私たちの素質に合わせてすべてを浄土に導き救ってくださるのだ。その方法が九つあると説いている。
私たちは常日頃何気なく生きていても、仏さまの方では、いかに浄土に往生させるかを考えてくださっている。それが九品(くほん)だ。上品(じょうぼん)・中品(ちゅうぼん)・下品(げぼん)の三品で、その品ごとに上生・中生・下生の三生が付随するので九つになる。
この場合、品は「ぼん」と読む。上品(じょうひん)ではなく、上品(じょうぼん)なのだ。その上品(じょうぼん)には上品上生、上品中生、上品下生があり、中品(ちゅうぼん)には中品上生、中品中生、中品下生。下品(げぼん)には下品上生、下品中生、下品下生、しめて九品の往生の仕方があるというのが『観無量寿経』の教えである。上品上生は非の打ち所のない人が対象、下品下生は、悪業を犯した罪人の往生の仕方なのだ。つまり、悪人でも救われると説いている。
だからといって、それをいいことに悪を犯してはならない、むしろ、仏さまのご慈悲に感謝すべきなのだ。仏さまへの感謝の気持ちこそが私たちの心を清めてくれる。(阿 純孝)