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2018年8月法話 『山の猿と海のクラゲ』
山の猿と海のクラゲ
山に住んでいる猿は海に憧れ、海に住んでいるクラゲは山に憧れた。
猿は海に突き出た松の木に登り海を眺め、クラゲはその下の海の中から山を眺めては、(一度でいいから行きたいなあ)とおたがいに思っていた。猿とクラゲが仲よしになるのには時間はかからなかった。猿はクラゲに山の木の実のことを話し、クラゲは海の魚の泳ぐ様子を話し、知らない世界を知って驚き、好奇心を抱いたのだった。毎日顔を合わせることが日課となり、会えない時は悲しくなった。そんな仲よしであったが、あるとき、大変なことが起こった。
クラゲがお仕えしている竜王さまのお姫さまが病気になり、それを治すには猿の生肝しかないと医師は診断した。
竜王はクラゲに命じ
「お前が親しくしている猿をここにつれて来い」
と言った。クラゲは困った。
ここに猿をつれて来れば殺される。つれて来なければ私が危ない
クラゲはさんざん悩んだ末、猿にこう話した。
「キミが憧れている竜宮城につれて行ってあげよう」
クラゲは猿をだましたのだ。それを知らない猿は
「えっ、本当か、うれしいなあ」
といって、松の枝をゆすってよろこんだ。
さて、竜宮城につれて来た猿にクラゲは
「お姫さまの病気を治すためにキミの生肝がほしい。くれないか」
猿はしばらく考えて
「あげたいけど今はない、早く言ってくれればいいのに、重たいから松の枝にぶらさげて来てしまった。戻って持ってきてあげるよ」
クラゲは猿が逃げないように松の木の下までついて来た。猿は言った
「クラゲ君、キミは陸に上がれないだろう。ぼくが肝を持って来るまでこの海の中で待っていてよ」
猿は、してやったりと思い、山奥に入り、それっきり戻っては来なかった。
これは仏教説話『ジャータカ』にある物語だ。人と人とはどのようにつき合ったらよいのか、考えさせられるだはありませんか。