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2022年12月法話『顔の表情』
2022年11月23日
顔の表情
顔には姿形だけでなくさまざま表情がある。それは、私たちが心の中で思うことがそれだけ多いことを意味する。心のあらわれが表情だからだ。その中で一番いい表情といったら笑顔だろう。
古代ギリシャではアルカイック・スマイルといって笑顔の彫刻が今に伝えられている。日本でも飛鳥時代の仏像は私たちにほほえみかけてくれている。時代は下って、広隆寺の弥勒菩薩像も穏やかな微笑を浮かべている。
ということは、東西問わず”微笑”は理想的な表情と見られていたからだろう。
俗に「笑う門に福来たる」というではないか。笑顔を絶やさない家庭が幸せなのである。
ところが、この笑いでも、いろいろあって”冷笑”などという冷い笑いもある。相手をさげすんで笑いものにしたときの表情だ。また、”笑い飛す”という言葉もある。これは、まともに応じようとしないで笑ってごまかすことを言う。さらにまた、
「笑い事じゃありませんよ」
といったら、ことが深刻で真剣に考えなければいけない状態なのにまともに考えない時の表情のことだ。深刻な表情の反対側に笑いがある。
そう見てくると「笑い」には、アルカイック・スマイルとは別の、ゆがんだ、ゆるんだ笑いもあるのだ。
だがしかし、いろんな笑いがあろうとも、和顔愛語からにじみ出る微笑だけは忘れてはならない。それは人への思いやりから出る顔の表情だからである。 (阿 純孝)